2026年8月25日 · 文:Kiyo Darner · 約4分
エル・ベロがうちのハウステキーラになった理由
抹茶リータは、うちでいちばんよく出るドリンクのひとつです。少し前にその中身のテキーラが変わったのですが、こういうことはどこにも告知されないので、何があってどう選んだのかを書いておきます。
まず、身も蓋もない理由から
ハウステキーラはロス・ドスでした。いいボトルで、悪いところはひとつもありません。
ディストリビューターのSkurnikが取扱いをやめました。
理由はそれだけです。もめたわけでも、品質に問題があったわけでもなく、ただ流通の話。ニューヨークのバーは、誰かがここまで運んでくれるものしか注げません。ディストリビューターがブランドを手放せば、こちらの好き嫌いに関係なく、そのボトルは棚から消えます。
これは日常的に起きているのに、業界の外にはほとんど伝わりません。いつも頼んでいる一杯の味がある日そっと変わっていたら、バーテンダーが飽きたからではなく、流通の都合である可能性のほうがずっと高いと思います。
そういうわけで、ハウステキーラを選び直すことになりました。
ハウスボトルに求められること
ハウスボトルは、ゆっくり味わうためのボトルとは役割が違います。「ストレートで」と言われても気持ちよく注げる品質があって、なおかつカクテルに埋もれても生き残らないといけません。
多くのブランコがつまずくのは後者のほうで、これはほぼアルコール度数の話です。
度数の話
ブランコテキーラの多くは40度で瓶詰めされています。単体で飲むぶんには何の問題もありません。
これを抹茶リータに入れてみます。自家製のゆずスラッシュ、抹茶シロップ、そしてわさびソルトのリム。さらによく冷やして出すので、味の輪郭はいっそうぼやけます。40度のブランコはここで黙ってしまう。ゆずと抹茶は感じられて、どこかにアルコールがあるらしい、くらいの印象になります。
エル・ベロは44.5度です。
4.5度と書くとたいした差に見えません。けれど冷たくて甘い一杯のなかでは、アガベの味がするかしないかの境目になります。度数が支えることで、テキーラの胡椒のような、ミネラルのような部分が、柑橘の下に沈まずに上がってきます。
これはエル・ベロだけの仕掛けではなく、バーテンダーがカクテルに度数の高いスピリッツを選びがちな理由そのものです。大事なのは、このボトルがそれを分かったうえで造られていること。売り文句と中身が一致している、珍しい例だと思います。
無添加であること
エル・ベロは無添加であることが認証されています。これはカクテルでこそ効いてきます。
テキーラの規則では、表示義務なしに最大1%の添加が認められていて、よく使われるのがグリセリンやシロップです。ストレートで飲んだときに丸く、甘く感じさせるので、当然よく使われます。
けれど、こちらが意図して甘みを足している一杯のなかでは、隠れた甘みはうれしい要素ではありません。制御できない変数です。気づかないうちにボトルがやっていることに対して、自分のレシピを合わせにいく羽目になります。グラスの中身が分かったうえで、加減は自分でしたい。
無添加が実際に何を意味するのかは以前の記事に詳しく書いたので、ここでは繰り返しません。
どんなテキーラか
エル・ベロは、テキーラ・バレーのラ・コフラディア(NOM 1137)で造られています。マエストロ・テキレロはカルロス・エルナンデス・ラモス。
アガベはブルーウェーバー種を、低地の火山性土壌で有機栽培し、6年以上育ててから収穫。石とレンガの窯で焼き、ローラーミルで粉砕、ステンレスで発酵させ、銅張りのポットスチルで二回蒸留しています。
低地のアガベは土っぽく胡椒のような方向に、高地のアガベは甘く花のような方向に振れる傾向があります。法則というより傾向ですが、抹茶の入った一杯には低地のほうが合います。青さのある押し返す力がほしいからです。
ストレートで飲むと、グレープフルーツの皮と、焼いた根菜のような香り。そこからミネラルと青胡椒に移り、重さではなく伸びのある後味と、かすかな塩気が残ります。
ぜひ一度
抹茶リータに入っています。単体で飲みたい方は、アガベのリストにも並んでいます。氷を入れるより、軽く冷やして小さめのグラスでどうぞ。
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