2026年8月25日 · 文:Kiyo Darner · 約3分
抹茶リータのわさびソルトができるまで
抹茶リータは、うちでいちばんよく出るドリンクのひとつです。設計して作ったものではありません。リクエストと、採らなかった案と、カウンターに置かれたサンプルの袋から、少しずつ積み上がってできました。
誰かに頼まれた
あるお客さまから、抹茶を使った何かを作れないかと言われました。
始まりはそれだけです。コンセプトも、メニュー会議もありません。抹茶で何か飲みたい人がいて、では抹茶は何の隣に座りたいのだろう、と考えにいきました。
たどり着いた答えがテキーラとゆずでした。抹茶は苦くて青くて、野菜のような性格があります。ブランコのテキーラも、方向は違うけれど胡椒っぽく青い。そしてゆずは、その二つをまとめられるだけの鋭さを持っています。口に出してみれば当たり前に聞こえますが、当時はまったくそう思えませんでした。
作らなかったほうのカクテル
同じ頃、周りからは「ジンジャーマルガリータがいいと思う」とよく言われていました。
そのとおりです。ジンジャーマルガリータはおいしい。そして、テキーラと生姜がある店ならどこにでもあります。つまりこの街のほぼ全部の店です。それを出したところで、よそではなくここで頼む理由にはならないし、この店について何も語っていない。
なので置いておいて、ひとりのお客さまのために作った抹茶のカクテルに戻りました。
リムのこと
仕上げをくれたのは、当時Mutual Tradingの営業担当だったKarinさんでした。僕が変わったものや面白いものを好むことを早くから分かってくれていて、これは気に入るんじゃないかと思ったものがあると、サンプルを持ってきてくれる人でした。そのうちのひとつが、金印のわさびソルトです。
これが足りなかった一片でした。辛みを生姜ではなく、わさびで入れる。この二つは別物です。わさびの辛さは鼻に抜けて、すっと消える。舌の上に居座りません。
なぜコーシャーソルトと混ぜるのか
リムはわさびソルトそのままではありません。金印のわさびソルトに、コーシャーのフレークソルトを混ぜています。この配合は、二つの別々の仕事をしています。
ひとつは辛さ。わさびソルトだけでリムを一周させると強すぎます。ひと口ごとに当たるので、三口目にはマルガリータではなくわさびを飲んでいることになる。混ぜることで、わさびを抜かずに角だけ取れます。
もうひとつは食感で、これは正直、ここまで効くとは思っていませんでした。コーシャーのフレークソルトは粗くて平たい結晶で、リムの上に留まって噛む感触が残ります。細かい塩はグラスに溶けて消えてしまう。リムは味わうだけでなく、触れて分かるものであってほしいのです。
なぜ成立するのか
自家製のゆずスラッシュを使ったマルガリータは、甘い飲みものです。そのままでは甘すぎます。
それを収めているのが塩で、これはマルガリータのリムの塩が昔から果たしてきた役割そのものです。わさびは、その後ろに小さな刺激を足します。甘い、しょっぱい、そして短い辛さが次のひと口の前に消えていく。
それだけの一杯が、いまではうちでいちばんよく出るもののひとつになりました。ひとりのお客さまが抹茶で何か、と言ったところから始まったことを思うと、いまだに少し不思議です。
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