2026年8月23日 · 文:Kiyo Darner · 約5分
うちのハイボールは42PSIで炭酸を打っています
ハイボールはウイスキーとソーダ。それだけの飲みものです。だからこそ、ごまかしの利く場所がどこにもありません。
うちのハイボールは、多くのバーとは逆向きの判断の上に成り立っています。その話を書いておきます。
始まりはエルドリッジ・ストリートでした
フルの酒類免許を取ったばかりの頃、エルドリッジ・ストリートにあるCocktail Omakaseでバーを率いているMatt Reslerと話をしていました。彼はその前にBar Gotoの立ち上げに関わっています。Bar Gotoはうちから数ブロックの場所にあって、この街の多くの人が「きちんと作られたハイボール」に初めて出会った店です。
話は自然と、比率と炭酸のことになりました。Bar Gotoでは、後藤健太さんがソーダを目分量ではなく計って注ぎます。しかも氷の上で跳ねさせず、氷のあいだを滑らせるように落とす。弾け飛んだ泡は、お客さんが飲めなかった泡だからです。
うちのハイボールがいまの形になっている理由の大半は、この会話にあります。
瓶のソーダの問題
その頃、僕はすでに炭酸を自分で作る仕組みを組み立てているところでした。理由は些細に聞こえて、実は些細ではありません。
瓶のクラブソーダは一定ではありません。開けたての瓶と、冷蔵庫で一日開いていた瓶は、別の商品です。しかも手に取っただけでは、どちらなのか分かりません。ソーダが動けば、ドリンクも動く。それなのにお客さんには、先週のハイボールのほうがなぜよかったのか、知りようがない。
Bar Goto Nibanも同じ壁に当たって、コロナ禍のあいだに自家炭酸に切り替えています。別々にたどり着いた、同じ診断です。
ここからが、逆に振ったところ
ここは技術ではなく、完全に好みの話です。
ハイボールの指南はたいてい、炭酸を最大まで持っていけと言います。ソーダをより冷たく、圧を高く、泡を多く、グラスに入るまで一粒も逃すなと。
僕は、そこまで強い炭酸のハイボールがあまり好きではありません。
自分のなかの基準は炭酸飲料で、書くと少し間抜けなのですが、コカ・コーラよりペプシの炭酸のほうが好きです。やわらかい。舌をこすらない。飲み続けられる。
ハイボールに欲しいのは、まさにその質です。ハイボールは何杯か飲むための飲みものだからです。強すぎる炭酸は、ひと口目こそ気持ちいいのに、三杯目には疲れてしまいます。
仕組み
それを軸に組み立てました。
まず水を専用の濾過システムに通します。ハイボールの大半は水なのに、水はいちばん意識されない材料だからです。そのうえで、ビール用のCO2ラインを使って42PSIで炭酸を打っています。
42という数字に落ち着きました。ハイボールとして間違いなく成立する強さ、つまり炭酸が与える持ち上がりと香りの立ちはきちんとある。それでいて、飲む側とけんかしない。そして毎回同じであること。これが、そもそもこの仕組みを作った理由でした。
比率と、飾らないこと
比率はしばらく試し続けました。決め手になったのは、ハイボールが何のための飲みものかを思い出したことです。
要はウイスキーを「いくらでも飲める」ものにすることです。薄めて何も残らなくするのでもなく、ソーダを少し足しただけの強い一杯にするのでもない。その中間のどこかに、食事と一緒に、二時間くらいかけて飲めて、それでいてウイスキーがちゃんと仕事をしている一杯があります。
飾りは入れません。浮かべるものも、表面で香りを組み替える柑橘のオイルもなし。ウイスキーとソーダなのだから、ウイスキーとソーダの香りがすればいい。
なぜ「季」なのか
ハウスのウイスキーはサントリーの季(TOKI)です。
季はいいウイスキーで、そして同じくらい大事なことに、多くの人が名前を知っています。ハイボールは、その人にとって初めてのジャパニーズウイスキーであることが少なくありません。自分が何を頼んだのか分かっている、というのは本当に価値のあることです。澄んでいて、うちの比率でも輪郭が消えず、身構えて味わうことを要求してこない。食事の隣に置く一杯として、正しいふるまいだと思います。
抹茶のほう
抹茶ハイボールは、Wine of JapanのShinichiさんに頼まれて生まれました。
八女10年を持ってきて、これで何かできないか、と。僕の感じ方では、あのウイスキーは土のような、少しスパイスの効いた方向に振れています。だから、それとぶつかるのではなく、隣に座ってくれるものは何かと考えました。答えが抹茶でした。あとから見れば当たり前に見えます。
八女10年に抹茶を少し、そしてソーダ。青々として、本当にさっぱりした一杯になります。8月に飲みたいのはこれです。
横ではなく上に行きたい方には、山崎12年のハイボールも。三杯は飲まない日のための一杯です。
ぜひ一度
メニューに載っています。きちんとしたハイボールが初めてなら、まず季のものを。そのとき炭酸の強さに少し意識を向けてみてください。ご意見があれば、ぜひ聞かせてください。
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